クリップ ナチュラルシリーズ
go for it ! で扱っているストリングの紹介です。
今回はナチュラルで新顔のブランド「クリップ」です。
新顔といっても実は昔から存在していたメーカーで、日本では
それほどメジャーではなかっただけ。
当時はクリップ・スプリンガーという名称で輸入されていました。
たしか、キモニーやエディが輸入元となっていた時期もあって、
テニス業界ではそれなりに知名度はあります。
ナチュラルの生産国は限られていて、北半球ゾーンと南半球ゾーンに
分けられます。それによって地域の牛の種類や育成状況が違うので
パフォーマンスも変わると判断されていました。ところが、昔はその
地域で原料となる牛腸を調達していましたが、現在では安定供給の
ために他の地域から取り寄せることも多くなったと聞きます。北半球に
ブラジルから相当数輸出されているようです。今では半球ゾーンの違い
は薄れているのかもしれません。
北半球ではフランスが圧倒的に多く、イギリスがそれに続きます。
フランスでは大手のバボラとBDE、イギリスではボウブランドです。
最近ではインドでも生産しているという事実があり、ちょっと驚きです
(ヒンドゥー教では牛は神様扱いなので腸は取れないはず)。
そして南半球ではニュージーランドとオーストラリア。両国とも牧畜が
盛んな国です。ニュージーランドはパシフィックという有名なメーカーが
あります。今回取り上げるクリップはオーストラリアのメーカーです。
<写真 左 KLIP LEGEND>プラスティックコーティング
素材:牛腸繊維
構造:リボンツイスト 色目:透明生成り
生産:オーストラリア製
長さ:約11.5m
太さ:1.25mm 1.30mm 1.35mm
価格:8,000円
<写真 中 KLIP ARMOUR PRO> カラーコーティング素材:牛腸繊維
構造:リボンツイスト 色目:非透明白
生産:オーストラリア製
長さ:約11.5m
太さ:1.25mm 1.30mm
価格:8,500円
<写真 右 KLIP GURU> コーティングなし
素材:牛腸繊維
構造:リボンツイスト
色目:非透明生成り
生産:オーストラリア製
長さ:約11.5m
太さ:1.25mm 1.30mm
価格:7,600円
特徴: クリップは豪州で一番メジャーなナチュラルストリングの
メーカーだ。豪州は4大大会の開催国なのでテニスが盛んな国。
テニス用品の生産もあったが、国内消費が中心だったのかあまり
日本ではお目にかからないブランドも数多く存在した。ラケットでは
エンブリックやステラ、ナチュラルではオリバーなどがあったように
記憶している。クリップはその中でダントツに有名であり、現在も
途絶えず存続している老舗である。
本来はナチュラルオンリーの会社だが、現在ではアクセサリーや
シンセティックも発売してバリエーションを増やしている。OEMでは
以前はトーナグリップのナチュラルストリングを行っていた。
ロゴはKの一部をとった赤い矢じり状。
以下はストリンガー澁谷のインプレッションです。
外観:レジェンドは透明な見た目でボウブランドに近い。しかしその
透明度が異物混入までわかるほどなので、ちょっと気になることも。
1張りに1か所くらいは異物的なちいさな黒点を発見する。
コーティングはしっかりとして表面はつるっとしている。
アーマーはナチュラルでは珍しい白。コーティングに顔料を入れて
いるようだ。一見ナチュラルらしくないが、顔料次第でどんな色でも
可能なのは目から鱗が落ちた。ナチュラルは生成り(きなり)の色と
思い込んでいることに気付かされた。表面はあまり光沢がない印象。
グルはコーティングなしのクラシックモデル。表面はガリガリとして
光沢はない。すべてのモデルでインクの刻印が赤で入っている。
張感:クリップのナチュラルはすべてクランプの爪痕がしっかり
残る傾向がある。つぶれた状態は回復しないのであまり強く締め
付けないことが重要だ。クランプをアルコールで清掃して、効率よく
最小限の力で爪を止めることが求められる。
張り上げた状態では面圧が出にくいタイプの糸。摩擦が多いのか
やや緩めに仕上がる傾向があるので、テンション設定はすこし
高めにするか、クロスをあまり下げないほうが無難だろう。
レジェンドはコーティング表面は固く、中が柔らかい印象。
リボン状をあまりきびしくツイストしていないようで、張っている
途中で糸が広がりやすい。きれいに張るためには注意が必要だ。
アーマーはレジェンドよりもさらに難しい。顔料を入れたためか
柔軟性が減ったようで広がりやすさが増している。さらに途中で
コーティングに亀裂が入ることも多い。ていねいにゆっくり張る
ことが必要なストリングだ。
グルはコーティングがないため、事前にトラブルを避けるチェックを
欠かせない。グロメットの破損や高テンションなどは対策を
しておかないと危険だ。クロスは摩擦が多いのでかなり慎重に
引きたい。できればワックスをメインに塗ってから張ること。
打感: レジェンドはナチュラルの中では最も音が澄んでいる。
カーンと響く打球音は気持ちがよい。打球感はちょっと固めだが
ホールド感は申し分ない。
アーマーはコーティングが厚いのか、ちょっと鈍い印象。
いわゆるナチュラルの感触というより、シンセティックマルチに近い。
グルはコーティングがないタイプなので、ものすごくショットが切れよく
引っかかる。スピン性能はダントツで、手応え感もダイレクトだ。
昔のナチュラルらしいよさがある貴重なモデル。耐久性を重視した
最近のナチュラルにはない「真のナチュラル」といえる。
このモデルの存在だけでクリップは高い評価をされるべきだ。
相対:デメリットとして、どのモデルもナチュラルとしては、張り易さや
耐久性はあまり期待できない。
しかし、他のメーカーにない個性がてんこ盛りのユニークなブランド。
相対するものより、唯一無二の存在として考えたい。
万人受けはしないが「これじゃないとダメだ」とほれ込む人は必ず
いるはず。特にグルはあの性能で細い1.25mmがあるのはかなり
思い切った英断だといえる。普通のメーカーなら尻ごみするだろう。
グルは、マニアなら一度は使ってみて欲しい逸品である。
“クリップ ナチュラルシリーズ” に対して2件のコメントがあります。
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インプレありがとうございます。
ポリエステルの新製品を中心に張り替えていただいています。
たまには正反対のストリングも楽しいと思いますよ。
コーティング無しは引っ掛かり易く,
ポリとは違う打感も癖になってます.
蜷川洋生