ポリエステルは緩みやすい?

ストリングの素材はざっくり分けると「天然もの」と「化学合成もの」。
さらに分類すると、天然ものは牛の腸の繊維で作った「ナチュラル」と
よばれる製品です。昔はシープと言っていましたが、これは羊の腸を
使っていたから。なんでもヒツジはストレスに弱く、腸に潰瘍が
できやすいそうです。繊維の途中で痛んでいる部分があると困ります。
テニスが盛んになるにつれ、ストリングの品質を向上することと、入手の
しやすさで牛を使用するようになりました。そのために製品の名称を
ナチュラルと表現するようになったのです。
澁谷がテニスを始めたころ1970年代にはシープ製はすでになかった
らしいです。だから私でもどんな打ち味だったのかはわかりません。
世の中では「天然もの=シープと呼ぶ」ことが思い込まれてしまって、
しばらくは訂正されずに過ぎてしまいました。ちなみに「ガット」とは
天然ものだけを指します。シンセティックはガットと呼びません。
これもいまだに訂正されずに使われてしまっています。
化学合成ものは石油由来の原料でできています。ナチュラルに
対しては「シンセティック」とよばれます。細かく分類すると、ポリアミド
(ナイロン=デュポン社の登録商標名)・ポリエステル・ポリオレフィン・
ポリエチレンなどがストリングで使用されています。
化学合成品は分子結合が変わるだけで違う特徴になります。
そこに添加物や樹脂的なレジンとして、ポリウレタンなどが加えられ
製品となります。
澁谷は文系のため、それほど詳しく説明できませんが、専門家に
聞いたりしていろいろ調べています。素材はテニス専用ではなく
世の中で普通に使われている汎用品のためのものです。
一般的な素材なので安く安定して入手できる原料なんですね。
そうじゃなければストリングがものすごく高価なものになります。
これは以前からテニス雑誌で主張していることなのですが、現在
テニス業界でポリエステルを「ポリ」と呼ぶのは間違いですよ~。
素材名の頭に全部、ポリ・●●●と付くんですから。
素材それぞれの特性があるので、ストリングになった状態の性能は
異なります。その違いはまた後日詳しく説明しましょう。
今回は「素材によって緩み具合は違うのか」というテーマ。
ここからが本題(相変わらず振りが長い文章だな~)。
よく「ポリエステルはすぐ緩む」とか「ナチュラルは緩まない」などと
言われています。それは本当でしょうか。

go for it ! ではストリングの面圧を測る測定器でゆるみ具合を調べて
張りに役立てています。ストリングを張った直後に測り、一日置いて
測り、打って測り、1ヶ月後に測り、そして3か月後にも測ります。
測定結果は、どんな糸でも同じように面圧は下がっていきます。
つまり素材によって緩みやすさは大差ない、という結論になります。
それではなぜ世の中ではポリエステルは緩むといわれるのか。
それは期待度がプレーヤーによって違うから。
ポリエステルを使う人はハードに打ちます。ボールは飛んでほしく
ないので、飛びを抑えたホールド感のポリエステルはありがたい。
それに対して、ナイロンやナチュラルは飛んでほしい人が好みます。
どの糸でも緩んでくると、より飛ぶようになります。
ポリエステルを使う人は「飛んでほしくないのに飛ぶようになった」
「スピンが一層かからなくなって困る」と感じます。
ナイロン・ナチュラルを使う人は「楽に飛ぶようになってうれしい」
「馴染んできたころが最高」と感じます。
これが期待度の違いだろうと澁谷は考えます。
ストリングの劣化は、素材にかかわらず同様にやってきます。
切れないからといって張り替えないのはプレーの向上の妨げに
なりますよ。定期的に(1年以内・できれば半年に1度でも)
張り替えすることをお勧めします。